妄想のチャンピオン

どういういきさつかは思い出せない運良く、

彼女から借りることが出来たレコード。

たぶん遠巻きにジワジワと「貸してオーラ」を

発散していたのであろう、中学生のおれ。

神谷さんが持っていたクイーンのレコード「世界に捧ぐ」

QUEEN 「NEWS OF THE WORD」

1ヶ月のお小遣いが1000円だった頃。

レコード2800円は大変な出費。

好きなビートルズも、

なかなか買えなかった。

なのに。

14歳の転校生、神谷さん。

海外アーティストのレコードを持っていた!

アイドル歌手ではなく、英語で歌う外人!

これはとてつもない出来事だった!のだ、

少なくとも僕にとっては。




なんて大人っぽい。




「We Are The Champions」のコーラスの衝撃よりも、

神谷さんからレコードを借りれたヨロコビ。

この上なし。

おれと、神谷さんはつながったのだ。

わっはははは。


お前達!あの神谷さんだぞ。

どうだ!それそれ!

訳の解らぬヨロコビと我こそがチャンピオン!

という優越感満面の笑みでジャケットを見つめる、おれ。

ステレオのボリュームも上がりっ放しだ。

そら!そら!そら! 

おら、チャンピオンじゃい。それそれ。  

母が階下から叫んでいた…  

ドン!ドン!ドン!(階段の壁をたたく音なのだ)  

太!太!(僕の名前だ)  

音、大きい!大きすぎ!(隣の北口さん怒るよ!)

ヨロコビと優越感に満ちあふれていたチャンピオンを

なだめるもの大変だったろうな。母は。


しかし、

そんなヨロコビと勝手な優越感は長くは続かない。

後で気がつく事実その時既に、

神谷さんには彼氏がいたのだ。

3日天下のチャンピオン。

なんて、子供っぽいんだ。俺。



大人になってから、神谷さんと飲む機会があった。

レコードの話をしたが、神谷さんの記憶には残っていなかった。

それはもう、遠い遠い昔の出来事なのだ。


しかし、僕の中で神谷さんはレコードを持っている。

今も変わらず。ずっと。


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▲ 「茅場町に捧ぐ」 妄想チャンピオン居ます、MAREBITOに。


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