通勤教育。
中目黒から日比谷線に乗ってきた母と娘。
清楚な白のワンピース、奇麗なお母さん。
その隣には制帽と紺ブレを着た、ちっちゃな女の子。
おもちゃのような赤い靴をブラブラさせている。
母 :「じゃあ、次はしりとりね」
女の子:「うん」
母 :「こま」女の子:「まんが」
母 :「ガメラ」女の子:「らっぱ」
母 :「パンダ」女の子:「だちょう」
母 :もぉ!
母 :「だちょうはダメだったって言ってるでしょ、何度も!」
女の子:「……」
母 :「ちゃんとやってくれないとほんとに困るンだからネ。じゃあ、連続で言ってみてくれる」
女の子:「やきにく」 「くらまえ」 「えんげい」 「いくら」 「らっぱ」 「ぱん……だ」 「だ……だ……」
電車が広尾の駅に到着した。
大きなカバンを背負い、手をつなぎながら降りていった、女の子。
母の白いワンピースが颯爽と揺れている。
身体よりも大きな、女の子のカバンも揺れてる。
階段を登っている赤い靴の残像が地下鉄の黒い窓に残っていた。
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